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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁
それは今朝の鐘乳洞の内で彼が見た、あの部下の兵達の突き刺すような視線であった。あの兵達はアパリ以来の彼の部下である。それ等をも捨てて宇治は此処までやって来た。勿論彼等は今朝、宇治の心中を見抜いた筈はない。唯何時ものように上官の話を聞く時のように注目していたに過ぎない。自分の行動を正当と信じるなら、何故あの時あのようにたじろいだのか。白く光る鍾乳石の間から彼に向って放たれたいくつもの青白い視線が、今なお彼の胸を堪え難く苦しめて来る。
「――さて、さて」
無意味な言葉をしきりに呟きながら、宇治はその想念を心から追い出そうとした。追い出そうとすればする程、それは宇治の心にすがりついて来る。堅く鎧った筈の心の、ごく狭い弱味を誤たずねらって、何故それらは鋭い刃を立てて来ようとするのか。
肩から吊った水筒がだんだん重荷になって来た。歩調につれて水筒の中で密度ある液体がぴちゃぴちゃと揺れるのが判る。宇治は頸を真直に立て鋭く視線を前方に固定させ、足を引摺ってあるいた。額から汗の玉が拭いても拭いてもしたたり落ちた。
――応召を受けて以来三年間、彼はあちこちを転戦して歩いた。