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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

町

チンドン屋の真似をしたためだ。流木の彼方の足跡は、もう定かではない。武蔵野の逃水のようにちらちらと、水がただよい動いているようだ。一帯を鈍い光が射している。太陽は薄い雲の中で、ことのほか巨大に見える。光が散乱するのだ。

「行こう」

五郎は瓶を捨て、少年をうながした。巨大な海と陽に背を向け、二人はゆっくりと歩き出す。

町

熊本の宿で、五郎は女指圧師に揉まれていた。指圧師は二十前後の体格のいい女で、黒いスラックスと白い清潔なブラウスを着けていた。体操学校の生徒のような趣きがある。人なつこい性格なのか、揉みながらしきりに話しかけて来る。

部屋はあまりよくなかった。形ばかりの床の間のついた四畳半。窓をあけても展望はない。床の間には鷹を描いた宮本武蔵の軸がかけてある。もちろん複製品だ。女指圧師がまず口にしたのは、この部屋の悪口であった。

「ひどか部屋ね。物置のごたる。お客さん。よう辛抱出来なさるね」

「仕方がないんだ」

彼は答えた。

「おれはそんなことに、もう怒らないことにしている」

彼女は揉み始めた。

「お客さんの体は、妙なこり方をしとるね」

「そうらしいな」

五郎は腹這いのまま答える。