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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

二

不しだらな生活をしてるから、学校に出ないで寝てばかりいるから。その様な原因を考えるのは恐かった。そこを考えないように逃げながら、外の事を考えようと探し廻る。外套の内で、指を曲げたり伸ばしたり強直させたりしながら足早に歩いた。何処に行くというあてもないのに、さて何処に行こう、と私は立ち止って四辺を見わたした。落日が家の瓦に半分懸かり、電柱の肌が黄色にそまっている。ぞわぞわがたがたと響きわたる騒音の中に、微かなおとがする。水が小石にあたるような、遠いところで雨が降るような、不思議に耳慣れたおとがする。舗道の人の足をくぐりぬけて、銀杏の葉が風に吹かれて走るのである。何故ともなく私は数え切れぬ疲労をどっと感じ、肩を海月のように落しながら、そこにある露地の中に入って行った。

二

暫くの後、私は台町あたりの下宿屋街の露地の奥にある、泥竜館という古ぼけた下宿の玄関に立って、大声を出して案内を乞うていた。玄関わきの帳場は雑然と取り散らされ人の影は無い。玄関には鏡があって私の全身を映しているが、外の明るさを背にして私の姿は暗く歪んでいる。電灯をつけないので、奥深い廊下のあたりが薄暗く何と無く気味悪かった。