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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

福は自慢した。

「泳ぎならうまいですよ。今は沖縄だが、生れは奄美大島だからね。子供の時から水もぐりにゃ慣れている」

「お前んちは漁師なのかい?」

「漁師じゃないけれども、五キロや十キロぐらいなら、今でもらくに泳いで見せますよ」

「五キロなら、おれだって泳げそうだな」

五郎は答えた。五郎も海辺の町で育ったので、水泳には自信があった。

「じゃやりましょうか。あの双剣石まで」

五郎はアルコールを含みながら、その方角を見た。彼等の宴の場所は、松林をすこし離れた大きな岩かげで、すぐ下から暗い海がひろがっている。時々思い出したように、しずかな波がやって来て、砂を洗う。海のところどころ、筋になったりかたまったり、ぼんやりと明るいのは、夜光虫のせいだろう。

「泳いでもいいな」

五郎は答えた。

「あそこまで六、七百米あるかな。一キロはない」

「やめなよ」

興梠二曹が傍から言った。

「泳いだって、どうなるものでなし。くたびれるだけの話だ」

「泳ぎたいんですよ。興梠二曹」

福は呂律の乱れた声で言いながら、もう上衣を脱いでいた。福は相当に酔っていた。五郎も立ち上った。

「おれも泳ぐよ」

福に張り合う気持は毛頭なかった。