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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

眼が血走っちょる」

「さっきの電話のことですか。ありゃ何でもない。途中で知合いになった男です」

五郎はわらった。

「疲れているんですよ」

「そうですか。相当お疲れのようですな」

主人は盃をあけた。

「明日はお早えかな」

「いや。寝たいだけ寝かしてもらいますよ」

五郎は答えながら、刺身のツマの大根を食べていた。千六本は適当に甘くからく、水気があってうまかった。主人は笑った。

「よほど大根がお好ッなようじゃな。で、枕崎に――」

「ええ。二十年前にはね」

五郎は箸をおろし、盃に手をやった。

「ここで部隊は解散してね、わたしは復員荷物を背負って、枕崎へ歩いた。峠のだらだら坂を登り切ると、いきなり海が見えた。海がぎらぎらと光っていた」

五郎は盃を一気にあおり、口をつぐんだ。すこし経って主人がうながした。

「そいで?」

「あ」

五郎は放心から醒めた。にが笑いをして、盃を置いた。

「それから枕崎に出て、故郷に戻りましたよ。汽車のダイヤがめちゃめちゃで、家に着くのに、二日二晩かかった」

「苦労しやしたな。明日は苦労は要らん。バスがあっから」

「いや。明日は吹上浜に行こうかと思っています。