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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

砂浜

歩いて」

「歩って行くのは無理ですな」

主人ははっきり言った。

「明日そっちに行くトラックの便があっから、そいを利用しゃんせ。わしがとこの荷を取りに行くんだ」

主人は掌を叩いて、老妻を呼んだ。

「もうお寝みになったが、ええじゃろ。ひどく疲れておらるるようだ」

老妻の手によって、食膳が下げられ、寝具の用意が出来た。淡い灯の光だけになった。ダチュラの匂いは、まだただよっている。彼は掛布団を顎まで引き上げる。女のことを思い出していた。熱い躰や紅い唇、切ないあえぎなどを。それを忘れるために、彼は心で念じた。

〈便所に行く時に、あの障子をあけないこと〉

〈絶対にあけないこと。階段を利用すること〉

五郎の体は宙に浮いて、ただよい始めた。ゆるやかに、ゆるやかに、波打際の方に。――五郎は福の体になっている。すっかり福になって、しずかに流れている。そう感じたのも束の間で、次の瞬間に五郎は眠りに入っていた。

砂浜

薩摩の言葉は判りにくい。早口でしゃべられると、全然判らない。外国の言葉を聞いているようだ。小型トラックの荷台に腰をおろして、まわりの風景を眺めながら、五郎はそう考えた。