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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁
鐘のかわりに茶碗を、太鼓のかわりに足踏みして。――夕食が済んだあと、三人がいきなり立ち上り、茶碗を叩きながら、
「チンチンドンドン、チンドンドン」
口で囃して、床を踏み鳴らして歩いた。大正エビは頭に派手な手拭をかぶり、衣紋を抜いている。女形のつもりなのだ。
爺さんはきょとんとした表情で、しばらく五郎たちの動作を眺めていた。それからにやにや笑うと、自分も茶碗を持ってベッドから飛び降り、チンドン行列に参加した。病室は壁が厚いし、床も頑丈に出来ているので、音は外部に洩れない。付添婦が入って来るまで、その騒ぎは続けられた。
叱られてベッドに這い登っても、爺さんは愉快そうであった。首謀者の電信柱は口惜しがって、
「爺さん。気分がおかしくならないのかい」
「おかしくならないね」
「なぜ?」
「お前さんたちが本もののチンドン屋でないからさ」
と爺さんは答えた。
「初めわしは、お前さんたちが気が狂ったのか、可哀そうに、と思ったよ」
もちろんこの病室の四人は、自分が気が狂っているとは、夢にも思っていないのである。電信柱が舌打ちをしてベッドに戻ると、爺さんは追打ちをかけるように言った。