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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

この味は敗戦の喜びに通じるところがある。食べ終わると彼はほっと息を吐き、煙草に火をつけた。お握りはもちろん、おかずも全部姿を消していた。

「君の家はここらかね?」

「うん」

少年はうなずいた。少年は日焼けして、肌も浅黒かった。眼が大きく、容貌はきりっと引きしまっていた。

「お父さんは、何してる?」

「町で自動車の運転手をしておる」

「町って、どこ?」

「伊作」

「お母さんは?」

「うちにおる」

「ふん」

彼はこの少年の一家のことを考えていた。

「も少しお酒が飲みたいな。君んちで飲ませて呉れないか」

少年は黙っていた。立って服の所に行き、服を着た。もうズクラ獲りはやめる気になったらしい。バケツの中に板と小刀を放り込んだ。五郎は性欲を感じた。少年に対してではない。海や雲や風の中で、自然発生的に浮んで来たのだ。酔いのせいもあった。流木のところであおった焼酎の酔いが、そのまま動かなきゃ暗く沈むところを、チンドン屋の真似をしたり、少年と話を交わしたばかりに、外に発散した。海からの誘惑は、もう消失していた。少年がぽつんと答えた。

「うちは困ッ」

「なぜ?」

「うちは酒屋じゃなか」

それは知っているが、と言いかけて、五郎は口をつぐんだ。