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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

百円玉を少年に渡した。

「あそこに茶店があるだろう。ジュースを二本買って来て呉れ、咽喉が乾いた」

少年はちょっとためらったが、五郎は無理に掌に押しつけた。少年が立ち去ると、五郎は自分の在り金を全部つかみ出して勘定した。

「もし伊作に泊るとすると――」

その分をポケットに入れた。残りの金では、とても東京まで戻れない。しばらく掌に乗せたまま、考えていた。

「熊本まで行って、三田村に電報を打って、送金してもらうか」

三田村と言うのは、病院を紹介して呉れた友人のことだ。今は画廊を経営している。五郎は熊本で学生生活を四年送ったことがある。三田村はその時からの友人であった。熊本から電報を打つという思いつきは、そこから出た。三田村ならためらわず送金して呉れるだろう。学生時代にそば屋だった店があり、二人ともそこによく通い、酒を飲みそばを食べた。それが戦後旅館に転向して繁昌していると聞いた。女主人とは顔なじみだし、そこから電報を打てばいい。

〈そうだ。丹尾も阿蘇に登ると言っていたな〉

五郎は枕崎までの同行者を思い出した。別に丹尾に再会したいとは思わないが、金が送られて来るまでに、時間がかかるだろう。