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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

彼は決然と床柱から背を剥がし、呼鈴を押した。女中がやって来た。

「佐土原というあんまさんがいるそうだね」

「はい。おいもす」

「呼んで呉れ」

「はい」

女中は手早に布団をしき、出て行った。あんまはすぐにやって来た。痩せて背が高く、盲目のようである。かんはいいらしく、独りで手探りしながら、部屋に入って来た。五郎はあわてて膳を部屋の隅に押しやり、布団に寝そべりながら言った。

「ぼくはあんまをとるのは、初めてでね。あんまり無理な揉み方をしないで呉れ」

「へ、へへえ」

あいまいな返事をして、老人の指は彼の頸筋にとりついた。背中を一応揉み終ると、あんまは彼の腕を揉み始めた。

「妙な凝い方をしておいやる」

「どんな具合に?」

あまり人が凝らないところが凝っていて、緊張している筈のところがだらんとゆるんでいる。あんまはくぐもった声でそう説明した。

「何か病気でんしやしたか」

「うん。いや」

あんまというやつは、どうもくすぐったい。くすぐったい反面に、いまいましい感じがある。向うが自由にこちらの体を動かす。こちらの自主的な姿勢は許されない。あんまに奉仕しているみたいだ。それが第一に癪にさわっていた。