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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

〈イヤだな。歩き廻るのはよそうか〉

と思っても、今宿屋に戻る気はしない。

天気はよかった。空気は乾いていた。光はあまねく街に降っていた。

ここを離れて、五郎は時々この土地のことを思い出し、また夢にまで見た。それはいつも青春の楽しさや愚行につながっていた。楽しさや愚行に都合のいいように、街の相は彼の頭の中で、修正されているかも知れない。その修正と、現実の街の変貌が一致しない。それが五郎には面白くない。

五郎は歩いていた。時折立ち止り、ふり返り、周囲を見廻す。追われている感じからではない。町のたたずまいを確めるためだ。追われている、尾行されている感じがなくなったのは、症状が好転したわけではなく、三田村に電報を打ったことに関係あるらしい。自分の居場所を教えてしまった。そのことが不安感をいくらかやわらげている。

〈もうおれは浮浪者ではなく、ヒモつきの旅行者だ〉

入院中に見たテレビの一画面を、彼はふと思い出した。宇宙船から乗員が這い出して、空中を散歩するのである。アナウンサーの解説では、人間史上画期的な瞬間だそうだが、彼にはひどく醜悪なものに見えた。ぶよぶよした貝の肉のようなものから、畸形の獣めいたものが出て来る。