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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁
自分の瓶の残りを飲み干した。そして視線を下に向けた。
「これ、駅弁じゃないね」
丹尾の言葉は、とたんにぞんざいになった。
「駅弁にしては、豪華過ぎる」
「君はずいぶん酔っぱらってるね」
「酔っちゃいけないかね」
「そりゃいいけどさ。この弁当は宿屋につくらせたんだ」
「どこの?」
「熊本」
五郎が食べ始めるのを見て、丹尾は安心したように箸をとる。ちらちらと景色を見ながら食べる。
「どうもいけないね」
丹尾は箸を置きながら言った。
「どうもあの穴を食べそうな気になる」
彼もさっきから同じような気がしていた。穴というのは、火口のことだ。あんまり雄大なので、ふと距離感がなくなり、弁当のおかずと同じ大きさに見えるのである。丹尾は景色に背を向け、口を開いた。
「ねえ。賭けをやりませんか?」
「賭け?」
「ええ。金の賭けですよ」
顔が赤黒く染まり、手がすこし慄えている。
「ぼくは火口を一周して来ます」
「どうぞ」
「それでだ」
弁当の残りをトランクにしまいながら、丹尾は言った。
「一周の途中に、ぼくが火口に飛び込むかどうか――」
「それを賭けるというのか」
「そうです」
五郎はめんくらって、ちょっと考えた。