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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁
「あたしがうたいます」
濃ゆい眉が二三度ぴくぴく動いて眼がとじられた。咽喉の奥から、きれいに澄み渡った高い声がほとばしりでた。
ああ情無やぼた餅は
突かれて焼かれてたたかれて
おわんの牢屋に入れられて
……………
ああ、何という悲しい歌ばかりみんな歌うのだろう。押えに押えて来た心の苦しみや悲しみが、その悲しいうたごえにつれてどっと胸の中に流れ出て来た。奇怪な錯乱のために、おばさんを凝視していた私の眼ぶたがかっと熱くなった。
……………
二本のお箸を杖として
おなかに一夜の宿を借り
明日は出て行く下の関
熱いものが胸から咽喉にぐっとこみあげて来たような気がした時、不覚にも私は思わず両手で眼をおおうた。火のように熱い涙の粒があとからあとからと瞼から流れ出て、頬から下にしたたり落ちた。私は座にいたたまれなかったのだ。人の生死や、人の苦楽と関係のない、身を裂くような悲しみが、心の底から湧き起った。私はあわてて廊下に転び出た。
廊下を曲って私は便所に入った。じっとしゃがみながら私は声をしのんで泣いた。何故泣きたいのか、はっきりわからなかったけれど、あとから涙がいくらでも流れ出た。