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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

しかし――」

「しかし?」

「ルソンでも日本は負けました。沖縄も玉砕しました。勝つか負けるかは、その時にならねばわからない――」

「よし!」

立ち断るように吉良兵曹長はさけんだ。獣のさけぶような声であった。硝子玉のように気味悪く光る瞳を、真正面に私に据えた。

「おれはな、敵が上陸して来たら、此の軍刀で――」

片手で烈しく柄頭をたたいた。

「卑怯未練な奴をひとりひとり切って廻る。村上。片っぱしからそんな奴をたたっ切ってやるぞ。判ったか。村上」

思わず、私も立ち上ろうとしたとたん、壕の入口から先刻の兵が影のように入って来た。つかつかと私達の処に近づいた。両足をそろえると、首を反らしてきちんと敬礼した。はっきりした口調で言った。

「昼のラジオは、終戦の御詔勅であります」

「なに!」

卓に手をついて腰を浮かせながら、私は思わずさけんだ。

「戦争が、終ったという御詔勅であります」

異常な戦慄が、頭の上から手足の先まで奔った。私は卓を支える右手が、ぶるぶるとふるえ出すのを感じた。私は振り返って、吉良兵曹長の顔を見た。表情を失った彼の顔で、唇が何か言おうとして少しふるえたのを私は見た。