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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 頁

青空文庫

お祖母さんは、はぐらかされたような恰好になったので、不機嫌らしかった。恭一は何かそぐわない気持だった。次郎は、しかし、数日来の憂鬱な気分が、それでいくらか拭われたような気がした。そして、母と入れちがいに正木に帰ってしまおうかと考えていたことも、いつの間にか忘れてしまっていた。

*

翌々晩の、俊亮とお芳との結婚式は、極めて簡素だった。お芳は式服も着ず、紋のついた羽織をひっかけて、正木夫婦と青木医師――竜一の父――とに伴われてやって来た。ほとんど同じ時刻に大巻夫婦も来た。それだけの顔がそろうと、みんなが狭い八畳の座敷に座蒲団を重ねあうようにして坐り、青木医師の肝煎で簡略に盃事をすました。

恭一たち三人にお芳の盃をまわしながら、青木医師は言った。

「これが今日の一番大事な盃です。」

恭一は、その盃をいやに固くなってうけた。次郎には、その様子がいかにも可笑しく感じられた。盃事が終ると、すぐ大人だけの酒宴になった。正木のお祖母さんに促されて、お芳はすぐお酌やお給仕をはじめ、茶の間や台所にも何度かやって来た。恭一たちはそのたびに彼女の顔に注意したが、彼女は大きな笑くぼを見せるだけで、一度も口をきかなかった。