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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 頁

青空文庫

一七 小刀

俊亮は、次郎が学校から帰ってくると、待ちかねていたように、彼にその葉書を見せた。そして、久方ぶりに彼の頭をかるくぽんとたたいた。

次郎は、さすがに心が躍った。しかし、彼は、

「ふうん。」

と言ったきり、葉書を父にかえして、二階にかけ上った。

机のまえに坐った彼の眼には、たった今、茶の間で、自分の顔を見つめていた祖母と母との眼が、いつまでもはっきり残っていた。

一七 小刀

七月八日は、ちょうど土曜だった、普通の授業は午前中ですみ、午後に、剣道の時間が一時間だけ残されているきりだった。

次郎は、教室で弁当を食べながら、お浜のことばかり考えていた。

(あの葉書には、汽車の時間が書いてなかったが、もう、うちに来ているのだろうか。来ているとすれば、今ごろは、自分のことがきっと話の種になっているにちがいない。お祖母さんはどんなことを乳母やに話しているのだろう。……乳母やと今度の母さんとははじめて会うのだが、おたがいに、どんなふうな挨拶を交わしたのだろう。)

次郎は、それからそれへと想像をめぐらし、はては、みんなの坐っている位置や、ひとりびとりの表情などをこまかに心に描いてみるのだった。