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えどげいじゅつろん

江戸芸術論

永井 荷風

線上閱讀永井 荷風《江戸芸術論(えどげいじゅつろん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,130 字 · 167 頁

青空文庫

二

石川豊信らと並んで頗る妖艶なる婦女の痴態を描きまた役者絵も尠しとせず。然れどもこの時代には役者絵の流行既に享保元文時代の如く盛んならず、その板刻時に甚粗雑となるの傾きありき。しかしてこの衰勢を挽回せしめたるものは実に役者絵中興の祖と称せらるる勝川春章なりとす。

二

勝川春章は肉筆専門の浮世絵師宮川長春につきて夙に色彩の妙技を学び得たり。あたかも好し宝暦過ぎて明和改元の翌年浮世絵板刻の技術は鈴木春信並に板木師金六の手によりて肉筆画に異ならざる完全なる彩色摺の法を工夫し得たり。春章が役者絵は独逸人ザイトリッツの『日本板画史』によれば明和元年を以て始まるといふ。春章がこの時代の板画は役者絵風俗画共にその曇りて軟かき色調、専ら春信に倣ふ処多かりしが、明和末年より安永に入るやその筆力は忽ち活気を帯びその色彩は甚だ絢爛となり、ここにいはゆる勝川派の特徴を明かにせり。仏蘭西人ゴンスは彼を以て鳥居派の豪健に春信の柔和繊細を交へたるものとなせり。今鳥居派奥村派の描ける丹絵漆絵の役者絵と、春章が勝川派の特徴を歴然たらしめし安永時代の役者絵を取りてこれを比較すれば一見して如何にその画風の写生に近きしかを知るべし。