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えどげいじゅつろん

江戸芸術論

永井 荷風

線上閱讀永井 荷風《江戸芸術論(えどげいじゅつろん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,130 字 · 167 頁

青空文庫

泰西人の見たる葛飾北斎

しかしてもしこれら国芳の板画を以て更に寛政及びその以前の画家の作に比較すれば全くその外形を異にしたる背景風俗と共に幕末の人心のいかに変化せしかを想像するに余あり。国芳画中の女芸者は濃く荒く紺絞の浴衣の腕もあらはに猪牙の船舷に肱をつき、憎きまで仇ツぽきその頤を支へさせ、油気薄き鬢の毛をば河風の吹くがままに吹乱さしめたる様子には、いかにも捨身の自暴になりたる鋭き感情現れたり。湖龍斎が画中の美人の物思はしく秋の夜の空に行雁の影を見送り、歌麿が女の打連立ちて柔かき提灯の光に春の夜道を歩み行くが如き、安永天明における物哀れにまで優しき風情は嘉永文久における江戸の女には既に全く見ることを得ざるに至りぬ。

浮世絵の人物画も山水画と共に一勇斎国芳を殿としてここにその終決を告げたり(国貞〈三世豊国〉の死は国芳に後るる事三年乃ち元治元年なり)。国芳の門人中(芳幾芳年芳虎等)明治に入りてなほ浮世絵の制作をつづけしもの尠なからざれども、こは明治における江戸美術の余命とやがてはその全滅の状況を尋ねんとするものに対して悲惨なる材料となるのみ。

大正二年六月稿

泰西人の見たる葛飾北斎