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かいじょうのみち
海上の道
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《海上の道(かいじょうのみち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 182,344 字 · 353 頁
三 弥勒二年丁卯
うしろへ弥勒がつゞいた
などという文句が列ねられているのを見ると、かつて稲作の豊熟をもって、いわゆる弥勒出世の第一の奇瑞と解し、米を祭場に撒きちらすことによって、その絶大の歓喜を表示しようとした時代が、あったということも想像し得られる。ただし海からやや遠い農村であるだけに、ここではもう舳艫という語が誤って伝わるのみで、みろくの船ということはすでに忘れられているようである。
三 弥勒二年丁卯
問題の中心とすべき点は、こういうおそらくは仏教に基礎を持たぬ弥勒の信仰が、いかにして我邦に生まれ且つ成長したかということであろうが、断定は容易に下し得ないまでも、是が単なる愚民の訛謬として、不問に附し去るほどの小さな現象ではないということと、一方にはまた幽かながらも幾つかの手がかりはあり、これに近よって行く方法も決して絶無とは言えないことだけは、今でも一通り述べておく必要を感ずる。自分は元来問題を永く温め、やたらに青刈りをせぬという修養を心がけた者であるが、今や残んの日もすでに乏しく、しかも近年の学風は、教理の本源を究むるに専らなるあまり、往々にして国内千数百年の変遷を挙げて、すべて零落の姿のごとく、見てしまおうとする傾きを示している。