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うずまけるからすのむれ

渦巻ける烏の群

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《渦巻ける烏の群(うずまけるからすのむれ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,240 字 · 35 頁

青空文庫

三

気がすすまぬように、だらりと手を出せば、それは見込がない。等々……。握手と同時に現われる、相手の心を読むことを、彼は心得てしまった。

吉永がテーブルと椅子と、サモ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ールとがある部屋に通されている時、武石は、鼻から蒸気を吐きながら、他の扉を叩いていた。それから、稲垣、大野、川本、坂田、みなそれぞれ二三分間おくれて、別の扉を叩くのであった。

「今晩は。」

そして、相手がこちらの手を握りかえす、そのかえしようと、眼に注意を集中しているのであった。

彼等のうちのある者は、相手が自分の要求するあるものを与えてくれる、とその眼つきから読んだ。そして胸を湧き立たせた。

「よし、今日は、ひとつ手にキスしてやろう。」

一人の女に、二人がぶつかることがあった。三人がぶつかることもあった。そんな時、彼等は、帰りに、丘を下りながら、ひょいと立止まって、顔を見合わせ、からから笑った。

「ソペールニクかな。」

「ソペールニクって何だい?」

「ソペールニク……競争者だよ。つまり、恋を争う者なんだ。ははは。」

三

松木も丘をよじ登って行く一人だった。

彼は笑ってすませるような競争者がなかった。