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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《牢獄の花嫁(ろうごくのはなよめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 頁

青空文庫

挑戦

藪牢の外で、声がした。

そこに、筵や、水桶や、さまざまな死刑の具をならべて待っていた刑吏たちは、ふり顧って、いちどに、わかれながら、

「ご大儀に存じまする」

と、頭を下げた。

「各※(二の字点、1-2-22)にも」

と、軽く、会釈を返しながら、その中へ、ずっと通って来たのは、羅門塔十郎と、東儀与力だった。

東儀はすぐに、頤を上げて、

「罪人を曳き出せ」

と、命じた。

そして、羅門と肩を並べながら、刑場の一方にある椎の木の下に、床几をおかせて、腰をおろした。

獄卒たちは、牢の鍵をあけて、躍りこむようになかへはいった。――そして、糸のように痩せ衰えた郁次郎を引き立てて、死の筵にすわらせた。

「太刀取り!」

「はっ」

「すぐに斬れ」

羅門のこう言ったことばの下に、刑吏は白鞘の大刀を抜いて、桶の水を、刃渡りへ、さらさらとながした。

ヒュッと、一振り、水を切って、刑吏は郁次郎のうしろへ廻った。東儀与力は、かたく肘を張って、口をむすび、羅門はじっと、深い眸を澄まして、唾をのんだ。

尊いかな、一秒の時間。

江漢老先生が駈けつけたのは、実に、その一瞬の時であった。それと見るより老先生は、両手をふりあげて、