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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《牢獄の花嫁(ろうごくのはなよめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 頁

青空文庫

彼の胸には、紛雑した事件が、もつれ糸を整理するように、順々に、解けて行った。切れたところは結び、解けないところは、切り離して考えてみた。

が――どうしても、腑に落ちない点が一つあった。疑問の烏爪の女は、花世のことばによると、この世に、四人あると言ったけれど、江漢が指を折ってみると、どうしても、五人になる――

第一には、殺された、女笛師の雪女である。

第二には、江之島神社の巫女である。

第三には、つい最近、舟辰の口からふと聞き出した船頭の千吉の妹で――柳橋の雛妓のお半。

――それと、花世。

これだけならば話は合うが、先日、舟辰と千吉が目撃したところによると、花世と生写しの怪美人玉枝という女にも、同じような黒い爪があると聞いた。すると――どうしても、五人になる。四人に、一人余る。

「はて? ……」

と、老先生は、もういちど、花世の「二つの答」を、読みなおして、考えこんだ。

どんと、駕が弾んだ。

同時に、ぎしっと、地上に感じた。

「――旦那、櫓下の現場です」

と、駕屋が、タレを刎ねた。老先生の眼には、すぐ、無数な人間の足許が映った。

無数な足の向うには、川の水が見えた。