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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《狂い凧(くるいだこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 頁
本当のことを知らせる方がいい、という栄介に、幸太郎は、
「知らせると城介の士気がにぶる。不治の病気じゃないから知らせる必要はない」
と主張した。栄介は内心腹が立った。反対のための反対だと思ったからだ。それに幸太郎は、なるほど福次郎の兄には違いないが、それだけの理由で立ち入って来る権限はもうない筈だ。若い栄介はそう思ったが、学資を支給されている関係もあって、その場は屈伏した。本家の機嫌をそこねると困るという母親の懇願も、栄介の気持をくじいた。
その論争は、病床の枕もとで行われた。福次郎はその論議と無関係に、いびきを立てながら横になっていた。最後に栄介は言った。
「じゃ直ぐ知らせるのは、やめましょう」
「うん。それがいい」
幸太郎は横柄にうなずいた。
「お前はまだ若いから、大人の意見に従うがよい」
子供の頃感じていた幸太郎への畏れが、今反抗に変りつつあることを、栄介は自覚した。彼は東京に戻り、一箇月ほど経って、福次郎の病状を城介に書き送った。
福次郎は体を動かせないまま、ずっと寝たきりであった。夏休みに栄介が帰省した時も、頭の機能は回復していなかった。あおむけに寝て、不精鬚を生やし、いくらか痩せて、眼玉ばかりがぎょろぎょろ光っていた。