輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《狂い凧(くるいだこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 頁

青空文庫

母親は黙って聞いていた。肯定も否定もしなかった。

「おれは幸伯父を憎んでるんじゃないんだ。好きでも嫌いでもない」

少しはウソを言っているなと自分でも感じながら、栄介は言った。

「幸伯父はね、まさかの時になると、自分のことしか考えない人なんだ。だから信用が出来ないんだよ」

「お前、まさか死んで来るつもりじゃないだろうね」

母親は思い詰めた表情で、別のことを言った。栄介はぎくりとした。

「生きて帰って来ないと、承知しないよ!」

「お母さん。何故そんなことを言うんだい? 縁起でもない」

母親の語気の荒さに当惑しながら、栄介は言い返した。

「きっと、いや、たいてい即日帰郷になるよ。この前と同じでね」

「それならいいけれど――」

母親は溜息をついた。

「幸さんにはやはり挨拶しといた方がいい。すぐ行って来なさい」

栄介は命令通り幸太郎の店を訪ねた。店の戸は半分閉じられていた。民需に廻す品物がなくなったからだろう。幸太郎は留守であった。応召のことは告げず、彼は家に戻って来た。翌日指定の海兵団に向って出立した。

「それで即日帰郷にならなかったと言うわけか」

「うん」

私の質問に、栄介はうすら笑いをもって応じた。