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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《狂い凧(くるいだこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 頁

青空文庫

「それは判りますがね」

校長は金ぶちの眼鏡を外し、布でレンズを拭きながら言った。

「あの事件のために退学処分をさせられるのと、家庭の事情で自発的に退学を願い出られるのとでは、大きな違いがあるんですよ。城介君の将来のためにね」

「家庭の事情って、たとえば――」

「学資が足りないとか、あるいは転校するためにとか――」

校長は老獪な言いくるめにかかった。福次郎は再度拒絶した。竜介の死以後の不遇が、かなり福次郎の気持を頑固にしていた。

「それは出来ません」

福次郎の言葉はやや荒くなった。

「食逃げをしたのは、わたしの息子だけじゃない。あと三人いる筈だ。その生徒たちの処分は、どうなさるつもりですか?」

もしも福次郎がまだ県庁の役人だったら、校長もこんな態度に出ることはなかったであろう。県庁なら学務課や視学課があるので、校長はむしろ城介をかばう立場に立ったに違いない。しかし福次郎は不幸にして職を追われ、今は小会社の庶務係に勤めている。無論校長はそれを知っていた。

それで最初の会談は、こうして物別れになった。

そういう状況を栄介は、後年福次郎のときどきの述懐で知っただけで、その時は何も知らされなかった。