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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《猫と庄造と二人のおんな(ねことしょうぞうとふたりのおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 頁
に生きてもいるのだった。
それに、品子は、庄造のことをたよりない人とは思うけれども、どう云うものか憎むことが出来なかった。あんな工合に、何の分別もなくふらふらしていて、周りの人達が右と云えば右を向き、左と云えば左を向くと云う風だから、今度にしてもあの連中のいいようにされているのであろうが、それを考えると、子供を一人歩きさせているような、心許ない、可哀そうな感じがするのである。そしてもともと、そう云う点にへんな可愛気のある人なので、一人前の男と思えば腹が立つこともあったけれども、幾らか自分より下に見下して扱うと、妙にあたりの柔かい、優しい肌合があるものだから、だんだんそれに絆されて抜きさしがならないようになり、持って来た物までみんな注ぎ込んで、裸にされて放り出されてしまったのだが、彼女としてはそんなにまでして尽してやったと云うところに、尚更未練が残るのである。全く、この一二年間のあの家の暮らしは、半分以上は彼女の痩せ腕で支えていたようなものではないか。好いあんばいにお針が達者だったから、近所の仕事を貰って来ては夜の眼も寝ずに縫い物をして、どうやら凌ぎをつけていたので、彼女の働きがなかったら、母親なぞがいくら威張ってもどうにもなりはしなかったではないか。