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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
線上閱讀菊池 寛《真珠夫人(しんじゅふじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 頁
七
信一郎の心が、不快な動揺に悩まされているのを外に、秋山氏は、今火を点けた金口の煙草を燻らしながら、落着いた調子で云った。
「それは、大問題ですな。僕の意見を述べる前に、兎に角皆様の御意見を承わろうじゃありませんか。」
そう云いながら、秋山氏は額に掩いかゝる長髪を、二三度続けざまに後へ掻き上げた。
七
「大分いろ/\な御意見が出たのですがね。茲にいらっしゃる渥美君、確かそう仰しゃいましたね。」三宅は、一寸信一郎の方を振り顧った。「大変紅葉をお説きになるのです。紅葉を措いて明治時代の文豪は、外にないだろうと、こう仰しゃるのです。文章丈を取っても、鼈甲牡丹のような絢爛さがあるとか何とか仰しゃるのです。」
三宅が、秋山氏に信一郎の持説を伝えている語調の中には、『此の素人が』と云った語気が、ありありと動いていた。秋山氏は、いかにも小説家らしく澄んだ眼で、信一郎の方をジロリと一瞥したが、吸いさしの金口の火を、鉄の灰皿で、擦り消しながら、「鼈甲牡丹の絢爛さ! なるほど、うまい形容だな。だが、擬の鼈甲牡丹なら三四十銭で、其処らの小間物屋に売っていそうですね。」
瑠璃子夫人を初め、一座の人々が、秋山氏の皮肉を、どっと笑った。