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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
線上閱讀蘭 郁二郎《秘境の日輪旗(ひきょうのにちりんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 頁
兄の研究
旦斎は、その特別な人、と、一行の素性を調べるのに、あらゆる苦心と努力をはらった。けれども、旦斎にわかったのは、日本へ来た使いの武士のことだけで、一行の素性は皆目わからなかった。
日本へ来た使いの武士は、ポルトガルの便船で、ようやく長崎の港についた。ひさしぶりに見る日本、なつかしい祖国の土を踏み、有頂天になっていた。
すると、長崎奉行の役人が来て、いきなり、武士に縄を打ち、引きたてて行った。
「何をする! えい、無礼者!」
武士は、どなった。
「拙者方は、太閤殿下に所用の者だ、人違いいたすな!」
兄の研究
「太閤殿下……ははあ、その方は大阪方だな」
捕手の上役が、ひとりで何かうなずいた。
武士は、ながながしい罪名で、縄をかけられたまま、江戸に送られた。――一つ、海外渡航の禁を犯したること。一つ、ポルトガル船を以て来航したること。一つ、大阪方残党の疑いあること。一つ、キリシタン、バテレン信者の疑いあること。……等々。
武士は、太閤――豊臣秀吉が、伏見の城に薨じ、つづいて秀頼も大阪夏冬の両陣に破れて自害したことを聞くと、さめざめと涙を流して泣き、それ以来、さまざまな拷問や、牢屋の責苦に遇ったが、奉行の取調べにも一言も口を開かなかった。