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ちくはくき

竹柏記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《竹柏記(ちくはくき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 45,798 字 · 91 頁

青空文庫

泣くかと思われたが、涙ぐみもせず、乾いたような眼で、まともに孝之助の顔を見まもった。

「私もひとこと云っておきます」

彼は穏やかな、しかし心のこもった調子で云った。

「人の一生はながく、つねに平穏無事ではない、静かな春もあれば、夏の熱暑もある、道は嶮しく、風雪は荒いと思わなければならない、この世は花園ではないのです」

杉乃は眉も動かさなかった。

「正直に云うが、私は貴女を愛している」と彼は続けた、「――まだ貴女が肩揚げのある着物を着ているころから、……ずっと貴女を愛していたし、今でも愛している、そして、いつもこう思っていた、貴女がいつまでも仕合せであるように、悲しんだり苦しんだり、辛いおもいをしないように、一生、安穏に、幸福にくらすことができるように……」

杉乃の唇が動いた。なにか云おうとしたらしい、しかし孝之助は続けた。

「私は才分も拙ない、富裕でもない、貴女にとっては不足であろうし、愛して貰う資格はないかもしれない、けれども私は貴女を世の風雪から護る、できる限り、平安な一生がおくれるように努めるつもりだ」

「貴方には、安穏な生活というものが、それほど大切なのですか」