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ちくはくき
竹柏記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《竹柏記(ちくはくき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 45,798 字 · 91 頁
六の二
「ええそうでちよ、はばかいちゃま」
孝之助は悲しげな微笑をうかべ、ふみの手を取って、脇へまわらせながら云った。
「憚りさまなんていけませんね、そんなことを云うとお母さまに叱られるでしょう、さあお父さまはいま御用だから、もう少し向うで遊んでいらっしゃい」
「釣りにはゆかないんですか」
「そう、……あとで、もしかしたらね」
彼は言葉を濁して、ふみを押しやった。そのようすでなにか察したのだろう、小太郎は妹の手をひいて去っていった。
六の二
岡村の家は元の処ではなく、松丸という処に新しく建てられた。そこは在から北畠へゆく道に当るので、途中まで来ると、
「叔母さまへ伺うのですか」
と杉乃が訊いた。いつになく、というよりも彼には初めての、明るい表情であり、やわらかい調子の声であった。彼は「いや」と首を振ったまま、道を曲った。
――さる人に二人で招待された、いっしょにでかけるから、紋服に着替えるように。
孝之助はそう云って、ゆき先は告げずに、出て来たのである。杉乃はなにも訊かず、おとなしく云われるとおりにしたが、ずいぶん久方ぶりに晴着を着、化粧をして出るためか、美しくなったばかりでなく、少しばかり浮き浮きしているようにみえた。