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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《蔦葛木曽棧(つたかずらきそのかけはし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 頁

青空文庫

からまる右門を払い除けて甚五衛門は奥へ駈け込んだ。

右門は胸を押し拡げ脇差しギラリと抜き放った。が、腹へ突き立てる隙も与えず山吹がその手へ縋りついた。

「離せ離せええ離さぬか!」

「いいえ離しませぬ離しませぬ! この手を離したらそれっきり、あなたは生害なさ……」

「切腹するは知れた事じゃ! 殿にも父にも見棄てられ、何オメオメと生きられようぞ!」

「いえいえそれでももう一度とっくりと考えてくださりませ。あの父上の仰せには木曽を離れて他国せよとこうあったではござりませぬか! それ故二人手をとってひとまずここを立ち退いたら、またよい考えも出ようも知れず、どこへ行ったとて私達二人、一生懸命働いたなら、暮らして行けぬこともありますまい。お願いでござんす、もう一度よく考えてくださりませ」

山吹はハラハラと涙を落とし、そのまま畳へ泣き伏した。

右門は頭を垂れたまま黙念としているのであった。

泉水を渡り木立を越えて、笛や琴のなまめいた音が、歌声に混って聞こえて来た。

「あなた!」と山吹は呼びかけた。

「うむ」と右門も頷いた。

右門は脇差しを鞘に納め、山吹の手を取って立ち上がった。