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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《蔦葛木曽棧(つたかずらきそのかけはし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 頁
意外の上使
――これは有名な古歌であるが、この古歌によっても知れるように、黒姫山は険しい山で、人の住めるような場所ではない。
しかるにこの山の中腹に一座の城廓が聳えていた。城廓と云うのが物々しければ砦と云っても差しつかえないが、まことに堂々たる構えであって、母屋、客殿、武具蔵など、幾棟かに分かれて建て連らなっている。
これぞ世にいう三左陣の一人、しかも最も兄分に当たる地丸左陣の山寨であったが、ある日頭領地丸左陣は、日当たりのよい南向きの座敷で一人書見に耽っていた。
そこへバタバタと飛び込んで来たのは、鳶の鳥市という小頭である。
「お頭、えらい事が出来ましたぜ」
「何んだ馬鹿、静かにしろ! 書見しているのが解らねえか」
「書見どころじゃござんせん。ご上使様のおいでですぜ」
「何、上使? いよいよ馬鹿だ! 泥棒の山寨へ何んの上使、大名に成った夢でも見たか」
「ところがそれが本当なので、ついそこまで来ているのですよ」
「ふうむ、そうしてどこからの上使だ?」
「木曽左馬頭義明公から」
「馬鹿に付ける薬はねえ、木曽と云えば義仲の後胤、どうして大した家柄だ。大名中での大大名よ。その立派な木曽家から、俺の所へ何んの用がある」