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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《蜘蛛の夢(くものゆめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 頁

青空文庫

その朝日のひかりを海の上に拝んで、お杉は思わず手をあわせた。きょうの晴れは自分たちの救われる兆であるようにも思われた。

三人は早々に朝飯の箸をおいて、出がけに再び下の宮に参詣した。四郎兵衛とお杉は草履、義助は草鞋、皆それぞれに足拵えをして宿の者に教えられた通りに、鎌倉から金沢へ出て、それから四里あまりの路をたどって程ヶ谷へ着くという予定である。

四郎兵衛の顔の傷も思いのほかに軽かったとみえて、今朝は腫れもひいて痛みも薄らいだ。天気もうららかに晴れているので、三人は徒歩で鎌倉まで行くことにした。ほかにもそういう考えの人たちがあるので、道連れではないが、あとさきになって同じ路をゆく群れが多かった。その人びとの苦労のない高話や笑い声を聴きながら歩いていると、三人の気分も次第に晴れやかになった。まさかにお安もここまでは付いて来ないだろうと幾分の安心も出て、四郎兵衛もゆるやかに煙草などをすいながら歩いた。

無事に鎌倉に行き着いて、型のごとくに名所古蹟を見物した。ゆうべまでは鎌倉を通りぬけて、真っ直ぐに江戸へ帰るつもりであったが、さてここまで無事に来て見ると、そんなに慌てて逃げ帰るには及ぶまいという油断が出たのと、めったに再び来ることも出来ないというので、三人は他の人たちと同じように見てあるいた。