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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《赤ひげ診療譚(あかひげしんりょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,548 字 · 47 頁

青空文庫

井戸の底から喚き声が聞えて来た。反響がひどいうえに、恐怖のため声がうわずっているので、言葉はやはり聞きとれなかった。

「おい、そうどなるな」と長次が云った、「どなったりあばれたりすると、それだけ早く精が尽きちまうぜ、それにここは忘れられた場所だ、おれたちでさえ、書いた物が出るまえには知らなかった、いくら喚こうと叫ぼうと、こんりんざい人の来る気遣えはねえ、へたにあばれるより、おちついてよく考げえてみるんだ、四つのときそこで、死にかかっていたってえことをな、――あばよ」

長次が手を振ると、与平たち三人が、向うから石の蓋を運んで来、三人がかりで、やっと井戸の口を塞いだ。

「先生に話さなかったわけがわかるでしょう」と長次が登に云った、「こうするんだと聞けば、先生はきっと反対なすったでしょうからね」

「どうだかな」と登は微笑した。

「あっしたちのような人間でも、このくらいのはらいせはしたかった、これで野郎も幾らかこたえるでしょう」と長次が云った、「さて、角三も待ちかねてるだろうし、帰ってこの書き物を読んでもらいましょうかね」

「しかし、まさかあのまま」と登が訊いた、「高田屋をあのままにして置くつもりじゃあないだろうな」