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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《赤ひげ診療譚(あかひげしんりょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,548 字 · 47 頁
七
唇から涎をたらし、片手で喉を押えて、言葉にならない言葉を絞り出しているようすは、殆んどまともには見られないほど哀れであり、むしろすさまじいという印象を与えるものであった。
「いいわよ、うちへ帰りましょう」とおたねが云うのを、登はうしろに聞いた、「角さんは大丈夫よ、仏壇なんて縁起でもないことを云わないで、おじいさんはうちでじっとしてればいいの、なんにも心配することなんかありゃあしないわよ」
登は路地から中通りへ出ていった。
七
登はそれから小石川橋へまわった。松平若狭家で去定といっしょになる、という予定であったが、音羽のほうが早く済んだためだろう、去定の来るまで、半刻ほど待たなければならなかった。――そのあと、八カ所の外診を済ませて、養生所へ帰ったのは午後五時。いつもに比べるとわりに早いほうで、登は久方ぶりにきれいな風呂へはいり、夕餉も森半太夫と膳を並べて、ゆっくりと喰べた。食事が終って茶になったとき、半太夫がなにげない口ぶりで、津川が戻って来るよ、と云った。登にはなんのことかわからなかった。
「保本と入れ替った男さ」と半太夫が云った、「津川玄三、覚えていないかね」