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しぜんかいのきょぎ
進化と人生(下)
丘 浅次郎
線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(下)(しぜんかいのきょぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 55,568 字 · 109 頁
このような場合に、その当人は幻覚を幻覚と思わず、これを真実と確信してその上に勝手な人生観を立てることが多いが、われらから見ればこれは熱病人の幻覚と同一に取り扱うべきものである。インドの宗教信者の行なうような、難行苦行をすれば、ずいぶん光明を放った仏の姿がありありと目の前に見えることもあろうが、これはその当人限りに見えるものでだれにもその存在を信ぜしめるわけにはゆかぬ。特殊の一個人が特殊の修行を積んで、初めて達しえた神経系統の特殊の状態は、普通の健全な人間と異なるという点においては、熱病人と毫も異なるところはない。
しからば、われわれは何を信ずべきかというに、われらの考えによれば、普通の健全な人間が、普通の境遇にあって、甲の感覚器の誤りを乙、丙、丁の感覚器によって検査するというだけの注意を払うて見聞したことを信じておくのがいちばん安全である。疑い始めれば、際限がないゆえ、やむをえずどこかでがまんして、信じておかねばならぬが、前に述べた病気や薬による幻覚のことなどを思えば、まず、病気にもかからず、薬の影響をもこうむっていない普通の健康者を標準として、それらの人間が見たと信じ、聞いたと信じていることをともに信じておくのほかはなかろう。