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しぜんかいのきょぎ

進化と人生(下)

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(下)(しぜんかいのきょぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 55,568 字 · 109 頁

青空文庫

人間には感覚の器官が幾種類もあるゆえ、たとえ一種の感覚器で誤り感じても、他の感覚器で調べてみれば、その誤りなることに気がついて決してまちがいのままには終わらぬ。ただし注意を怠ると、繩が蛇に見えたり、薄が幽霊に見えたりして、これを見た当人は確かに蛇や幽霊を見たと信じている例はいくらでもある。

ない物が見えたり、ある物が見えなかったりするのが幻覚であるが、熱病などにかかるとこのことは決してまれでない。もしも世間の人間がことごとく同じ熱病にかかり、同じ幻覚を持ったならば、これを訂正する道はないわけであるが実際にはさような場合は決してあるはずはなく、一人の熱病人の周囲には、数十人数百人の健康な人が控えているゆえ、これとくらべて、病人の幻覚の誤りなることはただちに確かめられる。ガスをかいだり、薬を飲んだりすれば、神経系統にある変化が起こって、幻覚が生ずることのあるべきはだれにも理解せられるであろうが、病気や薬によらずともずいぶん幻覚を生ぜしめうる場合があろう。たとえば日常普通の生活状態とは大いに異なった境遇に身をおいたり、つねには決してせぬような変わったことをなし続けたりすれば、神経系統の具合が変わって、そのため他人には見えぬ物が見えたり、他人の感ぜぬことを感じたりするようになることもあろう。