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ずいひつ みやもとむさし

随筆 宮本武蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 宮本武蔵(ずいひつ みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,786 字 · 278 頁

青空文庫

武蔵が十三歳頃は、もう父の無二斎は歿していたが、屋敷はあった。寛永十五年頃に公命で取壊されるまで、三十間四方の石垣が残っていたというから、かなりな構えであったらしい。無二斎の名は、十手術の達人として四隣に有名であったから、歿したのを知らずに、喜兵衛がここへ訪ねて来たものとすれば穏当である、少年の弁之助と試合ってもうなずける。

顕彰会本の宮本武蔵伝も、このことは、

「姑らく誌して疑いを存しておく」

といって濁しているが、僕は史実としてやはり採らない。

丹治峯均筆記にはまた、こんな話ものせてある。武蔵、幼年から父の兵法を見て、いつも口賢く誹謗する、無二斎はわが子ながら気にくわないでいる所、当時、楊枝を削っている室に武蔵もいた。その小刀を手裏剣にして、ふいに投げ打つと、武蔵が面をかわしたので、小刀はうしろの柱に立った。無二斎が怒って、今度はほんとの小刀を打ったがまたかわして外へ逃げ出した。そこで、彼は家に帰らず、播州の母方の僧を頼って郷里を捨ててしまったという。

これなどは、どう考えても、受けとり難い。よほど無二斎という人物が、子に対して特異な性情の人でない限りは考えられない話だ。