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ずいひつ みやもとむさし

随筆 宮本武蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 宮本武蔵(ずいひつ みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,786 字 · 278 頁

青空文庫

時勢一転

たし、そして「多聞院日記」の筆者同様、「いかゞ成行やらん」と暗澹としていた世間の顔の中に、彼は呱々を揚げていたのである。

秀吉でさえ、北陸の丹羽長秀へ出した指令の文の一節には

――此表、十四五日之内に者、世上之物狂も、酒酔之醒たるごとくに(後略)

と見えたりしている。その後には「筑前覚悟を以てしづめ申す可」という文字なども見える。いかに戦士自身も緊張していたか、日本中の大動乱と前途の暗黒を意識していたかがわかる。

けれど事実は、後世になってみると、それから関ヶ原の役までが、すでに戦国日本の奔波は絶頂をこえていたのであった。人心は暗かったが、大地は平和を芽ざしかけていた。

それが、武蔵の生れた頃から青年期への時代であった。

時勢一転

関ヶ原の役の結果は、「……いかゞ成行やらん」としていた人心に、明白な方向を示した。

長期の風雲時代は、もう終熄して来たのである。

二つの勢力が一つに統一されかかり、同時に時代の分水嶺から、不遇に去る者と、得意な機運に乗って出る者とが二分された。

武蔵は弱冠十七歳で、関ヶ原の戦塵の裡へ身を投じている。どういう隊で、どういう資格で、というような所属は明白でないが、彼の父祖以来の郷土的な関係から推して、浮田中納言の一部隊につき、軽輩な一兵士として出陣したに過ぎないことは想像に難くない。