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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 宮本武蔵(ずいひつ みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,786 字 · 278 頁
五輪書と霊巌洞
現在の所蔵主へ移るまでには、なおそれから幾人もの手を転々して、価格も数倍、数十倍に昂騰して行ったに違いなかろうが、さるにても国宝級のものが、つい十七、八年前までは、そんな境遇にあったということが、何かおもしろく思い出されるのである。
五輪書と霊巌洞
寛永二十年の晩秋、彼が、岩殿山の一洞に籠って書いた「五輪書」は、武蔵としても、畢生の念いをうちこんで筆を執ったものにちがいない。それは、これにかかる彼の心の用意と、謹厳をきわめた精進潔斎ぶりと、そしてまた、五輪書そのものの書出し――序文を一読しただけでも、髣髴として、霊巌洞中の、一居士のそうした姿が眼にうかんでくる。
霊巌洞は、熊本市の郊外二、三里の距離にあって、かつて自分もそこの岩殿寺や、山下庵や鼓の滝のあたりなどを、武蔵の遺蹟を訪ねながら一遊したことがある。
熊本市の西南を囲む金峰山一帯は、ちょうど、京都の東山といったような位置と景観をもち、市街からその金峰山の峰道へ入って行った山ふところが、岩殿山、野出、三之岳などとよぶ山地と山村で、高いところに立つと、有明湾の水光が遠く木の間から眺められる。
霊巌洞は、岩殿寺の奥之院というかたちで、寺からまた一山越えた山裏の中腹にあり、洞窟の前からも、有明の海が、はるかに見えた。