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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 私本太平記(ずいひつ しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 56,947 字 · 114 頁
隠岐ノ島と一括して呼ぶ大小四つの島は、大別して北部の島後(どうご)と南部の島前(どうぜん)とに成っている。
古来、後醍醐帝が一年ほど流されていた地は、島前の黒木ノ御所となっていたが、これもまた、吉田東伍博士らの島後説が文部省をうごかし、帝の配所地は、島後の国分寺であると変更されて、従来の島前は、その史実性や指定地の資格まで取消されてしまったのだ。
ところが、古くからの島民の口碑伝説、また地名郷土史的なものは、すべて今もって、島前の黒木ノ御所がほんとの史蹟であるとして、かたく信じたまま疑っていない。
――そこで今日では、島へ来る一般観光客へも、一島の内の二ヵ所の遺跡で「後醍醐天皇の御配所の地はこちらでござい」と大声で家元争いを謳うという珍風景を呈しているわけである。どうも困ッた問題だ。さだめし後醍醐も地下で苦笑しておいでだろうが、私本太平記の筆者としても、いったい、どっちへ天皇をお流ししてよいものやら頭がいたい。
途中の警衛役として赴った佐々木道誉と帝との間には、恐らく史家も窺いえぬ史外の関係が生れていただろうと思う。
帝の流されてゆく隠岐ノ島の地頭も、道誉とおなじ佐々木同族の清高だった。