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ずいひつ しほんたいへいき

随筆 私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 私本太平記(ずいひつ しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 56,947 字 · 114 頁

青空文庫

――いつか、私たちは高い石段をのぼり切ッて、大きな枝垂れ桜を前にした安国寺の一禅室へ入っていた。――すでに沢山な古文書の類が、部屋いっぱい、展列されてあった。――尊氏の寄進状、義詮の御教書、清子の仮名文、上杉、細川、足利一族の下知状などである。私はすぐ清子の一通へとびつくように顔をよせた。見事な美しい筆である。尊氏の筆蹟の優雅なわけもこれでわかった。

屋くの郷のうちに 宮内卿殿へ欲しがられ候所にても 又いづくにても かうふく寺(光福寺)へ寄せたく候

名所とほど(程)などを承はり候へ 殿へも申合せさうらふべく候

まづそのほども知りがたき身にて候ほどに 申しをき候

生れそだちたる所にて候ほどに申をきさうらふ

かうゑい元年八月十三日

清子(花押)

うゑすぎのせうひつどのへ

年号の「康永元年」は、尊氏が九州から北上して、湊川に勝ち、室町幕府の緒を開いた――それから七年目の年で、また、あて名にみえる

上杉の正弼

というのは、清子の甥の、弾正正弼のことである。彼の住居の跡は、梅迫から一キロほどの北の上杉町にあって今でも“だんじょう原”と呼ばれている。

文の意味は「――自分もいつ知れない命なので、いまのうちに、どこぞの地でも光福寺(安国寺の前名)へ寄進しておきたい。