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せいあどうきだん

青蛙堂鬼談

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《青蛙堂鬼談(せいあどうきだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 121,438 字 · 238 頁

青空文庫

朝のうちは晴れていたが、午後から陰って蒸し暑く、六月なかばの宵は雨になった。お年と重助はだまって病人の枕もとに坐っていた。雨の宵はだんだんにさびしく更けて、雨の音にまじって蛙の声もきこえた。

「重助も帰ってくれ。」と、蛇吉はうなるように言った。

ふたりは顔を見合せていると、病人はまたうなった。

「お年も行ってくれ。」

「どこへ行くんです。」と、お年は訊いた。

「どこでもいい。重助と一緒に行け。いつまでもおれを苦しませるな。」

「じゃあ、行きますよ。」

ふたりはうなずき合ってそこを起った。一本の傘を相合にさして、暗い雨の中を四、五間ばかり歩き出したが、また抜足をして引っ返して来て、門口からそっと窺うと、内はひっそりしてうなり声もきこえなかった。ふたりは再び顔を見合せながら、さらに忍んで内をのぞくと、病人の寝床は藻ぬけの殻で、蛇吉のすがたは見えなかった。

それがまた村じゅうの騒ぎになって、大勢は手分けをしてそこらを探し廻ったが、蛇吉のすがたはどこにも見いだされなかった。彼は住み馴れた家を捨て、最愛の妻を捨て、永久にこの村から消え失せてしまったのであった。

彼が妻にむかって、この商売を長くはやっていられないと言ったことや、隣り村へゆくことをひどく嫌ったことや、それらの事情を綜合して考えると、あるいは自分の運命を予覚し