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せいあどうきだん
青蛙堂鬼談
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《青蛙堂鬼談(せいあどうきだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 121,438 字 · 238 頁
三
S君はその茶をすすり終えて例のまじめな口調で「家有妖」の由来を説きはじめた。
夜になっても戦闘は継続しているらしい。天をつんざくような砲弾の音と、豆を煎るような小銃弾のひびきが、前方には遠く近くきこえている。それをよそにして、S君はこの暗い家のなかで妖を説くのである。我れわれ四人も彼を取巻いて、高粱の火の前でその怪談に耳をかたむけた。
三
「ここの家の姓は徐といいます。今から五代前、というと大変に遠い昔話のようですが、四十年ほど前のことだといいますから、日本では元治か慶応の初年、支那では同治三年か四年頃にあたるでしょう。丁度かの長髪賊の洪秀全がほろびた頃ですね。」
S君はさすがに支那の歴史をそらんじていて、まずその年代を明らかにした。
「ここの家も現在は農ですが、その当時は瓦屋であったそうです。自分の家に竈を設けて瓦を焼くのです。あまり大きな家ではない。主人と伜ふたりで焼いていた。それへ冬の日の夕方、なんでも雪の降っている日であったそうですが、二人の旅びとがたずねて来た。たずねて来たといっても、物に追われたようにあわただしく駈け込んで来たのです。その旅びとは主人にむかって、我れわれは捕吏に追われている者であるから、どうぞ隠まってもらいたい。