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せいあどうきだん

青蛙堂鬼談

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《青蛙堂鬼談(せいあどうきだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 121,438 字 · 238 頁

青空文庫

「わたくしはもともと乞食ですから、ふたたび元の身の上にかえると思えばよいのです。」

お冬は平気でいるらしかったが、庄兵衛は最愛の妻を伴って乞食をする気にはなれなかった。元和二年の師走の夜に、かれが浅草の並木を通ると、むこうから来る一人の男に出逢った。それは町家の奉公人で、どこへか懸取りに行ったらしく見えたので、庄兵衛は俄かにきざした出来ごころから不意にそのゆく手に立ちふさがった。

「この師走に差迫って、浪人の身で難渋いたす。御合力くだされ。」

一種の追剥ぎとみて、相手も油断しなかった。彼は何の返事もせずに、だしぬけに自分の穿いている草履をとって、庄兵衛の顔を強くうった。そうして、こっちの慌てる隙をみて、かれは一目散に逃げ去ろうとしたのである。

泥草履で真っこうをうたれて、庄兵衛は赫となった。斬ってしまって、いまさら悔む気にもなったが、毒食わば皿までと度胸をすえて、庄兵衛は死人の首にかけている財布を奪い取って逃げた。浅草寺のほとりまで来て、そっとその財布をあらためると、銭が二貫文ほどはいっているだけであった。

「こればかりのことで飛んだ罪を作った。」と、彼はいよいよ後悔した。