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せいあどうきだん
青蛙堂鬼談
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《青蛙堂鬼談(せいあどうきだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 121,438 字 · 238 頁
」
喜兵衛も溜息をつかずには聴いていられなかった。むかしから刀についてはこんな奇怪な因縁話を聴かないでもないが、笛についてもこんな不思議があろうとは思わなかったのである。
しかし年のわかい彼はすぐにそれを否定した。おそらくこの乞食の浪人は、自分にその笛を所望されるのを恐れて、わざと不思議そうな作り話を聞かせたので、実際そんな事件があったのではあるまいと思った。
「いかに惜しい物であろうとも、身の禍いと知りながら、それを手放さぬというのは判らぬ。」
と、かれは詰るように言った。
「それは手前にも判りませぬ。」と、弥次右衛門は言った。「捨てようとしても捨てられぬ。それが身の禍いとも祟りともいうのでござろうか。手前もあしかけ十年、これには絶えず苦しめられております。」
「絶えず苦しめられる……。」
「それは余人にはお話のならぬこと。またお話し申しても、所詮まこととは思われますまい。」
それぎりで弥次右衛門は黙ってしまった。喜兵衛も黙っていた。ただ聞えるのは虫の声ばかりである。河原を照らす月のひかりは霜をおいたように白かった。
「もう夜がふけました。」と、弥次右衛門はやがて空を仰ぎながら言った。