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せいあどうきだん

青蛙堂鬼談

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《青蛙堂鬼談(せいあどうきだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 121,438 字 · 238 頁

青空文庫

殺してしまえば用はない、あとは勝手に煮るとも焼くともしてくれと言ったが、座頭の執念のこもっているようなその魚を平助はどうも食う気にはなれないので、いつもそれを眼の前の川へ投げ込んでしまった。

一日に一尾、生きた魚の眼を突き潰しているばかりでなく、さらに平助をおどろかしたのは、座頭がその魚を買う代金として五枚の小判を彼に渡したことである。午飯に握り飯一つを貰っていた頃には、毎日一文ずつの代を支払っていたが、小屋に寝起きをするようになってからは、平助と一つ鍋で三度の飯を食っていながら、座頭は一文の金をも払わなくなった。勿論、平助の方でも催促しなかった。座頭は今になってそれを言い出して、お前さんにはたくさんの借りがある。ついてはわたしの生きているあいだはこの金で魚を買って、残った分は今までの食料として受取ってくれと言った。あしかけ二年の食料といったところで知れたものである。それに対して五枚の小判を渡されて、平助は胆をつぶしたが、ともかくもその言う通りにあずかっておくと、座頭は半月ばかりの後にいよいよ弱り果てて、きょうかあすかという危篤の容体になった。

旧暦の二月、あしたは彼岸の入りというのに、ことしの春の寒さは身にこたえて、朝から吹き続けている赤城颪は、午過ぎから細かい雪さえも運び出して来た。