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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《魔術師(まじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 頁
「アラ、こんなものが落ちていましたわ」
文代が目ざとく、土の中から拾い上げたのは、銀製のヘヤピンである。見覚えとてないけれど、妙子さんのものに相違ない。
「やっぱりそうだ。もう今頃は、あいつの船へ連れ込まれている時分かも知れません。サア、船へ行きましょう。まさか、あなたを置去りにして出帆してしまうこともないでしょう。僕をその船へ案内して下さい」
「エエ、それはもう、あたし覚悟していますけれど、あなたお一人では……」
「ナニ、心配することはありません。グズグズしていては、手おくれになります。それに大勢で向うよりも、僕一人の方が却って仕事が仕易いのです。僕はもうちゃんと、その手だてを考えてあります」
そこで、二人は手を取って、大通りまで駈け出すと、タクシーを傭って、隅田河口へと飛ばした。
文代の指図で車の止った所は、月島海岸の見渡す限り人気もない、淋しい広っぱであった。川口の航路をさけて、遙か彼方に、一艘の小型汽船が、泊るともなく漂うともなく浮んでいる。淡い檣燈の光で、やっとその所在が分るのだ。
「何か合図があるのですか」
親船から艀を呼ばねばならぬ。それには賊の定めた合図がある筈だ。