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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《魔術師(まじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 頁

青空文庫

壁の穴

幽霊にでも追っかけられているものの様に、あとをも見ず、死にもの狂いに走っていた。

と、玄関の暗闇の中から、影の様な人物が、ニューッと現われて、妙子の行手に立ちふさがった。

「アハハハハハハハ、逃げようたって、逃げられやしないぜ」

その男はふてぶてしい声で云って、ギュッと妙子の肩を掴んだ。巨大な手の平、恐ろしい力、小雀の妙子は、振り切る力もなく、ヘナヘナとその場へくずおれてしまった。

壁の穴

丁度その時、赤いカーテンの部屋の隣室では、電燈もつけぬ真暗な中に、三人の人物が、妙な格好で一かたまりになって、古壁の小さな穴を覗いていた。

誰があけたのか、壁に一寸程の丸い穴があって、そこから隣の部屋が見通しなのだ。

穴の正面に例の妙子の開いたカーテンが下っているので、覗いている三人には、妙子が、外からそのカーテンを開いてから、悲鳴を上げて逃げ出すまでの、一切の挙動、表情が、手に取る様に眺められた。

「明智さん、妙子はどうして、あんな恐ろしい悲鳴を上げて、逃げ出したのです」

妙子の姿が消えて、やっとしてから、三人の内の一人が、壁の穴から目を離し、囁き声で云った。

「あの顔を見ましたか」