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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

と堤を下りた。

「どうぞ、お出まし下さいませ。場所は、農人橋の東詰、そこは四国屋の出店でござりますが、東堀の浄国寺に添った所が、大阪へ来た時の住居になっておりまする」

「そして、また会う日と時刻は」

「そちら様のご都合のよい時……、したが、昼は人目もありますから、なるべくは夜分のほうが」

「いかにも、では、明後日」

「きっと、お待ち申し上げます」

「ことによると拙者はまいらずに、このお綱と、万吉と申す者が、お邪魔に伺うかもしれぬ」

「あの万吉様なら、木曾路でいろいろな親切にあずかりましたお方、ぜひ、お目にかかりとう存じます。それでは、今日はこれで……」と、新吉をうながして、お久良は、玉造の並木のほうへ帰って行った。

弦之丞とお綱は、ふたりの姿がはるかになるまで、そこを動かなかった。

「法月様――ここでしたか」

と、その時、川の底で呼ぶ声がする。

ふりかえると、猫間川の水が、大きな波紋を描いて、苫をかぶせた小舟が一艘、斜めに辷って、水禽のように寄ってきた。

乗ってきたのは、万吉である。

棹をしごいて、水玉を降らし、舳をザッと芦へ突っ込むと、無言のまま弦之丞が飛び乗った――そしてお綱も。